◆ 六条御息所③ ◆ | ||
六条御息所は、離れてゆく光源氏との愛を諦めるため、斎宮に決まった娘と共に伊勢へ下ろうと心に決めました。 斎宮とは、伊勢神宮にお仕えする姫君で、未婚の皇女から選ばれます。 母親がついてゆくという前例はないのですが、このまま都にいては光源氏が忘れられず、距離を置けば苦しい想いが立ちきれるのではないかと、御息所は思ったのです。 斎宮に決まると、精進潔斎のため一年間 嵯峨野の野々宮に籠らなければなりません。 今 御息所は娘と共に野々宮にいます。 夕顔や葵の上が亡くなるときにはっきりと御息所の生霊を見てしまった光源氏。 高嶺の花と憧れ追いかけたあの頃の情熱はすっかり冷めてしまったのですが、伊勢へ旅立ってしまうとなると、それはそれで寂しく、光源氏は野々宮へお訪ねになりました。 忘れようとしているのですから、そっとしておいてくださればよいのに‥ 惨めな姿は見せたくはないのに‥ 揺れる御息所でしたが、やはりもう一度お逢いしたくて触れたくて‥ 部屋にお通ししてしまうのでした。 もうその気のない男の優しさは残酷です。 |